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ここはどこだ。そうか、夢だったのか。

タオルケット1枚では少し肌寒いと普通の人は感じるくらいの小太りには心地よい季節がやってきた。病むほどの汗ばむ夏がようやく終わり、カロリー消費に最適な季節の到来だ。


スポーツの秋、私は走っていた。

私は夢の中で休むことなく走り続けていた。

どこに向かって?目的地はない。あるのは逃げるという明確な目的だけ。


意外なことに普段なら感じる関節、筋肉の乳酸疲労はない、そりゃそうだ。夢だもの。

ハンターが爆速で追いかけてくる、確保されそうになる瞬間、私はそれを紙一重で避ける。

まるでパルクールとワイヤーアクションを組み合わせたようにハンターには捕まらない。

そりゃそうだ。夢だもの。


おい、私の筋肉。夢のまま終わらせていいのかい。夢のまま終わらせたくないのかい。どっちなんだい。

『夢で終わらせたくない!』

そう、私は秋の心地よい朝の風を肌で感じながら逃走中に思いを馳せる。

夏という敵から、逃走成功したということだ。


逃走中に出たい。

私の唯一の夢だもの。

 
 

それは不可解な出来事だった。観たことのあるような、ないような。

体験したことのあるような、ないような。世の中には物が溢れ、情報が錯綜し、あらゆるモノやコトが簡単に手に入るこの時代、不思議な感覚にそれを観た私は囚われた。


そう、それは初恋に近いのかもしれない。まさしく心を奪われたのだ。


私をその不可解な出来事であり、不思議な感覚にさせた初恋の相手こそ、そう『逃走中』である。私はマトモな人間である。真面目な人間でもある。


しかし、この番組を観ている私は自我を失い、それはまるで空を飛ぶペンギン、いや縄跳びができる子豚のように俊敏になり、神経が研ぎ澄まされる。汗をかき部屋中を飛び回る。


自称・妄想ハンターから逃げるごっこである。


逃走中に出るために今まで恋愛を断ってきた。

モテないとかモテるとかではなく、私は逃走中に恋している。


ただ、それだけだ。

 
 

© ハヤタタクヤ

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